2023年12月28日読了時間: 17分「シーン」、あるいは、共存の空間 / 森本淳生【2023年12月23日に開催された、ジャック・ランシエール『文学の政治』(森本淳生訳、水声社、2023年6月刊)オンライン合評会(フーコー研究フォーラム主催)の記録】 【合評会冒頭の書物紹介】 本日はランシエール『文学の政治』の合評会にお集まりくださり、ありがとうございま...
2023年2月6日読了時間: 7分ヴァレリーの言葉を導きに フランス文学者の白鳥の歌──保苅瑞穂『ポール・ヴァレリーの遺言──わたしたちはどんな時代を生きているのか』(集英社、2021年)/ 安永愛プルースト研究の泰斗として知られ、モンテーニュやヴォルテール、さらにはレスピナス嬢についても優れた著作を残した保苅瑞穂は、奇しくもプルースト生誕150周年にあたる2021年7月10日にパリにて亡くなった。本書は、文芸誌『すばる』2019年9月号から2021年1...
2021年5月19日読了時間: 16分他者の痛み:『愛のディスクール──ヴァレリー「恋愛書簡」の詩学』(森本淳生・鳥山定嗣編、水声社、2020年)/ 伊藤亜紗『愛のディスクール』を読んで感じた率直な感想は、ヴァレリー研究者としての戸惑いである。私は文学研究ではなく美学の立場からその芸術論を中心にヴァレリーについて研究してきたので、このような伝記的な事実については知らないことばかりだった。もっとも、冒頭に記されているように、本書は...
2021年5月19日読了時間: 22分『愛のディスクール──ヴァレリー「恋愛書簡」の詩学』(森本淳生・鳥山定嗣編、水声社、2020年)/ 田上竜也かつて厳格な主知主義者と目されていたポール・ヴァレリーの精神世界において、波乱にみちたエロスの劇が重要な役割を果たしていたことが知られるようになって久しい。近年、遺族によるプライバシー管理がいくぶん緩やかになったことにともない、ヴァレリーが女性たちに宛てた書簡を中心とする資...
2020年10月11日読了時間: 12分Jean-Luc Nancy, La Jeune Carpe (1979)/ 鳥山定嗣ジャン=リュック・ナンシーは風変わりな「哲学者」だ。単に「詩」を書くからというだけではない。ルクレティウスからニーチェまで古来より名高い「詩人哲学者」は存在する。だが、詩人の作品――それも500行以上に及ぶ長篇詩――のパロディを手がけた哲学者は他にいるだろうか。ナンシーが異...
2020年6月19日読了時間: 15分ラ・グローレ探訪記 / 松田浩則ヴァレリーがポッジ家の領地ラ・グローレを最初に訪れてちょうど百年目にあたる2020年の3月12日、いくつかの幸運が重なってラ・グローレを訪ねる機会を得た。 パリのモンパルナス駅からTGVに乗り、ボルドーのサン=ジャン駅で支線に乗り換え、リブルヌ(Libourne)駅で降りて...
2019年9月20日読了時間: 7分カトリーヌ・ポッジの『日記』の1ページから / 松田浩則カトリーヌ・ポッジの『日記』Journal 1913-1934は1987年にÉditions Ramsayから出版されたが、その後2005年、それより小型の版が、注を若干数追加するかたちでÉditions Phébusから出版された。双方とも、序文はLawrence...
2019年9月9日読了時間: 3分佐野泰之『身体の黒魔術、言語の白魔術──メルロ=ポンティにおける言語と実存』(ナカニシヤ出版、2019年)/ 森本淳生本書はフランスの哲学者メルロ=ポンティの初期から中期までの思想を「言語」とりわけ「文学」の問題を中心に考察し、真理を語る哲学者の「生」とは何かを探求したものである。メルロ=ポンティの文学者や画家に対する言及は夙によく知られているが、著者はより具体的に、2013年に初めて刊行...
2019年9月6日読了時間: 2分三浦信孝・塚本昌則編『ヴァレリーにおける詩と芸術』(水声社、2018年)/ 中畑寛之ポール・ヴァレリーが煉獄を脱する... 漸く! そのような悦ばしい出来事を我々は目撃できるかもしれない。2017年10月21・22日に日仏会館で催された同名のシンポジウムを基に編まれた本書を読み終えて最初に想い浮かべたのが、まさしく、ベアトリーチェたちに導かれるひとりの詩人...